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[04.07.08] 押井さんとの会話
大友監督のいるスチームボーイスタジオは、各パートのスタッフが1フロアに集結しているという特徴があり、デジタルアニメの制作工程の複雑さを考えると、これはなかなか理想的な環境。意外と単純な話だけど、「作画」と「仕上」と「制作」がフロアを隔てただけで問題は発生する。ミスとは大抵、コミュニケーション不足が原因だからだ。その点、スチームボーイスタジオは合理的な現場と言えた。
一方で大友監督は大変。監督室からトイレに立つ往復の瞬間を狙って、多くのスタッフが監督のもとへわらわらと集まる。チェックで何度も呼び止められ、トイレに行くだけでいつも一苦労でだった。
別件で昨年の暮れに、『イノセンス』制作で多忙を極める押井守監督とお話する機会がありました。前述のエピソードが面白かったので、押井さんに話してみたところ…
「んなことやってるから(作るのに)何年もかかるんだよ! デジタルはチェックが膨大にあるから、自分は一切見ない。各工程にチーフを置いて、責任者の判断に完全にまかせる。デジタルではそれが肝心なんだ。大友さんみたいな方法でやってたら、『イノセンス』なんて一生できないよ」
と、一喝。作品の方向性が異なる『イノセンス』と『スチームボーイ』では、そのビジュアルやストーリー以前にまず制作のシステムが180度違うんだと、押井さんに教えられました。なるほど、勉強になるなー。
皮肉なことに、まわりにチェックを振りまくった押井さんが一時、「仕事をしない監督」のレッテルを貼られてたのはここだけの話。(補足しておくと、押井さんは『イノセンス』完成に向けて猛烈に働いてましたよ)。
システムを語る前に演出家として「絵を描く」か「絵を描かない」かが、二人の監督の大きな違いなのかもしれないですけどね。とにかく、押井さんとの会話を通して『スチームボーイ』のあり方を考えるというのは、僕にとってかなり刺激的な出来事でした。
ではまた。
桑島(製作宣伝)
2004 07 08 | 固定リンク
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» スチームボーイ---二人の監督 from 興味シンシン
押井守と大友克洋
ジャパニメーションなんてカテゴリーで語られてる時、必ずでてくるお二人なんですけど、本当に180度違う人達なんですよね。
やっぱり、... 続きを読む
受信: Jul 10, 2004, 7:16:40 PM
» 製作のやりかた。 from copeaux de fer
押井さんと大友さんって、同年代だし
いろいろとライバルな関係なんだろうか…
と疑問を抱いていたら
STEAMBOY公式BLOGでいい感じの記事を発見。
... 続きを読む
受信: Jul 29, 2004, 10:24:03 AM